前回、雇用契約更新のための法律の基礎知識について書きました。今回はその続きです。
先日、初めてのパートの契約更新をしたときに実感した、「有期雇用」のメリットと、ほんのちょっとのデメリットについてご紹介します。
「有期契約」と「無期契約」 どちらを選ぶ?
前回も書きましたが、H24に公布された「改正労働契約法」。その中の大きな変更点の一つである「無期転換ルール」が最近ニュースになっています。
(無期転換ルールとは)
有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。
厚生労働省HP(労働契約法の改正について)より引用
このルールは、施行日である平成25年4月以降の契約から適用されます。なので、一部の有期契約労働者はH30年4月に無期転換の権利を得ることになるのです。
今の職場は更新の上限が設けられているため、みみじろーの契約が5年を超えることはありません。たとえ更新の上限がなくても、5年も働く前にぜひとも夫婦でアーリーリタイアを達成していたいと思っています。
では世間一般ではどうなのでしょうか。
株式会社 アイデムの「無期雇用転換に関する調査(2017年)」 によると、
(無期雇用転換の意向:パート・アルバイト全体)
- 無期雇用に転換し、労働条件・待遇も【一般的な正社員】と同等になりたい・・ 15.7%
- 無期雇用に転換したいが、一般的な正社員ほどではなく、【限定正社員】のような労働条件・待遇になりたい・・ 32.3%
- 無期雇用に転換し、労働条件・待遇は現状のままでよい・・ 19.7%
- 無期雇用に転換しない・・ 32.3%
(無期転換しない理由)
1位:辞めたいときに辞められなくなりそう
2位:この会社で長く働くつもりがない (以下略)
無期転換を希望する人が全体の7割弱。
そして、条件が整っても無期雇用を希望しない層が3割超。思ったよりも、有期雇用のままで働きたい人の割合が多いと感じました。もちろん、みみじろーも後者の3割のうちの一人です。
パート・アルバイトは、「時間、期間、責任範囲を限定した」働き方をあえて選び、それが自分に合っていると感じている人が多いのかもしれませんね。
一方で、契約社員(フルタイム)の「無期転換しない」率は15.5%。8割以上の方が、「正社員と同じ時間働くなら、無期転換して安定して働きたい!」という考え方のようです。
同じ有期契約労働者でも、目指す働き方は人それぞれ。今回の無期転換制度が、安定して働き続けたい人にとって追い風になるといいなぁと思います。
ただ、みみじろーの目標は夫婦でアーリーリタイア。「安定して働き続ける」とは正反対です。自分にとっての有期契約のメリットとデメリットを考えてみました。
有期契約の7つのメリット
- 自分の都合に合った働き方ができる
勤め人である以上、会社の指揮に従う必要はありますが、正社員のように突然の転勤、大量の残業に見舞われる危険は低くなります。最初に自分の条件と合う求人を見つけ出すのがポイントですね。 -
責任範囲が限られている
パートの場合、雇用条件通知書に業務内容が明記されていることが多いです。自分の業務の範囲において責任を持てばいいというのは、とても気持ちが楽なものです。人の仕事に責任を持つのは大変ですから。 -
自分の好きな仕事を深堀りできる
日本の正社員は、たとえばエンジニアとして入職しても、いずれマネジメントや外部との交渉など業務範囲が広がっていきます。最初から業務範囲の限定されたパート専門職なら、思い切り自分の専門分野を深堀できる可能性が高いのです。 -
辞めたい衝動をスルーしやすい
「朝起きて定時に行くのは疲れる」「仕事飽きた、ブログ書いてる方が楽しい」。会社勤めは辞めたいトラップがたくさん。それでも、「今回の契約期間が終わるまで」と思えばなんとかトラップを回避できることも多いのです。(メリットかなあ?) -
契約期間ごとに働き方の見直しができる
今回の契約更新では、同じ労働条件で契約にしました。ですが、場合によっては「来年は日数を週2〜3日にしたい」という交渉も可能です。正社員時代は「週5日、40時間」以外に選択肢の余地はありませんでした。選べる働き方ってすごいです。 -
転職時の退職理由に困らない
正社員を退職する時の理由は、「一身上の都合」か「会社都合」。どちらを履歴書に書いても転職時に必ず詳細を聞かれます。有期雇用の場合は「契約期間満了につき退職」で全ての説明が済むのです。 -
失業等給付を受給しやすい
無期契約の自己都合退職は、失業等給付に3ヶ月の給付制限が発生します。その間は失業手当を受け取ることができません。一方、有期契約労働者が期間満了で退職した場合には、労働者側から更新を切っても正当な離職理由として認められ、7日間の待機期間後すぐに失業等給付が支給されるのです。
(勤続年数などの条件によって失業等給付の支給日数が増える場合もあります。詳細は 厚生労働省特定特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準でご確認ください。)
つまり、働きやすくて辞めやすい! 徐々に会社勤めから離れていこうとしている身にはとてもありがたい「有期雇用」。
それでもわずかばかりのデメリットも感じています。
有期契約の4つのデメリット
- 退職のタイミングが限られる
有期雇用契約は、原則、契約期間中に解約することができません。好きな仕事ではあるものの、更新契約をしたときに「また1年働き続けるのか。長いなあ」と重荷に感じました。半年で辞めたくなっても残り半年は我慢が必要です。その点、無期契約なら退職届ひとつで2週間(民法上)後には退職できるのです。
(あくまでも原則です。就業規則でルールが定められていればそちらが優先になる場合もあります) -
常に契約終了の可能性がある
今の職場はかなり働きやすいのですが、更新回数の上限で有無を言わさず契約終了になるのが少し残念です。事業の中止や予算削減など、さまざまな理由で更新の上限を迎える前に雇い止めを言い渡される可能性もあります。 -
なんども違う環境に慣れるのは大変
年齢とともに、転職して新しい職場に慣れるのが辛くなってきました。ずっと会社勤めをするつもりなら、常に転職の可能性がある有期雇用よりも、同じ企業で働くことができる無期の方がいいのかもしれません。辛くなる前に完全にリタイアしたいものです。 -
自分で能力開発をしないといけない
自社で長い時間をかけて育て上げる正社員に比べて、有期雇用のパートの教育・研修は後回しになりがちです。仕事のスキルアップや次の転職をスムーズに進めるためにも、業務外の時間かつ自腹で研修などを受けに行くことが多いです。自分の学びたいことを好きなペースでできるという意味では、むしろメリットかもしれません。
いろいろと比べてみましたが、やはり自分には有期で更新のたびに区切りがつけられる働き方が合っているようです。
更新面談の時に、みみじろーが正社員から転職してきたことを知っている上司から
「みみじろーさん、パートの働き方はどう?やっぱりいい?」と聞かれました。
「すごくいいですよ!目の前の仕事に集中できるし、体力も気力も余裕ができました〜。年1回契約の見直しがあるのもなんかすっきりしますね。」 ふふん。ここぞとばかりのドヤ顔になっていたに違いありません。
上司は、「そうだよね。みみじろーさんもまた正社員に戻っていくんだろうけど、やっぱりそういう時期ってあるといいよね」と、少し羨ましそうな遠い目をしていました。
いいえ課長。二度と正社員に戻ることはありません。どんどん会社から距離とっていきますよ。