退職の手続きで最初に提出する書類。それが退職願(届)。
退職願の本文は、「この度一身上の都合により、来る○年○月○日をもって退職いたしたく…(略)」が一般的。
ですが、中には、会社所定の書式で「一身上の都合」以外に「具体的な理由を記載してください」と求められる場合があるのです。
「具体的に」ってどれぐらい具体的に書けばいいのでしょう?真実を赤裸々に書くわけにいかないですよね?
今回は、この退職願(届)に記載する「具体的な退職理由」について考えます。
1. 会社が「具体的な退職理由」を求める目的は!?
みみじろーが前職で退職を申し出た時にも、会社所定の用紙には「具体的な理由」欄が設けられていました。
記載スペースは、A4用紙の横1行程度。上司に説明したような詳細な理由を書くゆとりは全くありません。簡潔に書いてほしいなら、なぜ「一身上の都合」以上に理由を深掘りするのでしょう?
いくつか理由を考えてみました。
- 離職率が高いから退職者に理由を聞いて改善したい
だったらいいなとは思いますが、この理由なら記載スペースはもっと大きいはずです。 -
法律上理由を聞くように定められている
期間の定めのない労働者側から雇用の解約を申し入れる場合の法律は、民法627条がありますが、申し入れの時期等を定めたものです。
民法上は理由の如何は問わず、口頭で解約の意思を申し入れるだけで成立するようです。理由記載欄どころか、退職願の紙さえ必要ないのですね。 -
理由を聞いてどこかに報告する必要がある (←たぶんこれだ!)
ヒントは離職票の書き方にありました。
厚生労働省の雇用保険被保険者離職証明書についての注意によると、「離職者から把握している範囲で可能な限り、離職に至った具体的な事情を記載してください」と書いてあります。
真面目な人事担当者が「手続き上具体的な理由を把握しなければ」と、会社所定用紙を作成したのかもしれません。 -
退職者がハローワークで「退職理由はパワハラだ!」とか蒸し返さないように退職理由の証拠を取っている (←これもか!?)
具体的な理由が書かれた退職届を保管しておき、離職者が労基やハローワークで「本当はパワハラでした!」と訴えた時にも、「いやいや。本人が自筆でこのように事情を書いておりますから」と証拠が出せるメリットがありそうです。
ただ、これは諸刃の剣。退職者が直球で「パワハラのため」とか書いたらどうするのでしょう?書き直させるのかな…恐ろしいです。
3か4の意図であれば、悩む必要はありません。
手続きのためと割り切って、対外的に波風立たない理由を書いて提出しましょう。
2. 離職票の「具体的事情記載欄」にはどのような理由が記載されるのか?
北海道ハローワークのサイトに、離職票の「具体的事情記載欄の主な記載例(事業所向け)」がありました。
「(7)労働者の個人的事情」の記載例を見てみると、「転職希望のため」「疾病のため」「一身上の都合による」が挙げられています。
えっ、一身上の都合でもいいの!?確かに「離職者から把握している範囲で可能な限り」ですから、把握していなければ一身上の都合としか書きようがないですよね…。
ですが、失業等給付を受けるつもりなら「疾病」「介護」等は理由にしないほうが良いかもしれません。
人事担当者が退職届の理由を参照して、離職票に「親族の介護のため」と書いた場合。失業手当の申請時に「介護で働けないから退職したんですよね?失業手当は就職できる状態にある失業者が対象ですよ?」とツッコまれそうです。
無難に「転職希望のため」と書くことにしました。これなら、以前上司に伝えた退職理由と合致します。
色々と悩みながら記入した退職届を人事に提出し、数日後。
離職票に押印を求められて内容確認したところ、事業主用の具体的事情記載欄には「一身上の都合」と書かれていたのです。雇用保険の手続きは関係なかったのでしょうか。仮説まで立てたのに。
結局、どうして具体的理由を求められたのかはわからないまま。思い余って人事担当者に聞いてみたら、「ずっとこの用紙だからね。なんでもいいんですよ。書いてあれば」と笑っていました。
きっと、初代担当者の「具体的な理由」欄を作成した意図は少しずつ忘れ去られ、様式だけが受け継がれてきたに違いない。そう自分に言い聞かせたのでした。